研究概要 |
癌抑制遺伝子であるp16INK4aとp19ARFはそれぞれ共通のexon2,3とexon1で構成されるが全く異なるタンパクをコードする。p16INK4aはpRBのリン酸化を阻害しG1/S期において細胞周期を止める働きがあり、(RB経路)p19ARFはp53を介してアポトース、細胞周期停止する働きがある(p53経路)。p19ARFの異常を検索し、p53の変異との関連を検討することにより、食道癌発生におけるp53を介するアポトーシスの経路の重要性が明らかになると考えた。本研究では同一遺伝子座CDKN2にコードされた2つの癌抑制タンパク(p16INK4aとp19ARF)が食道癌において、どのように発現しているかを検討した。平成12年度は食道癌切除標本より43症例についてRNAを抽出したが、平成13年度は追加で25例をRNA抽出し、合計で68例について検討した。半定量RT-PCRでの解析では、p16INK4aは25症例、p19ARFは12例に発現低下を認めた。p16INK4a、p19ARFと臨床病理学的因子との関係を調べたところ、その発現と臨床データに統計学的に有意な相関を認めなかった。さらに、pRB、p53に対する抗体を用いて免疫染色をしたところ、pRBでは15症例(22%)で発現低下を認め、p53では33症例(28%)で異常発現を認めた。しかし、p16INK4aとpRB、p19ARFとp53との間には有意な相関は認めなかった。
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