テロメラーゼ活性並びにテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の発現からみた抗癌剤の効果予測法を開発することを目的として、ヒト胃癌、乳癌培養細胞株を用いて基礎的に検討した。 胃癌培養細胞株3株、乳癌培養細胞株3株に対して5-flnorouracil(5-FU)、doxorubicin(DOX)、cis-platinum(CDDP)、irinotecane(CPT-11;SN-38)を添加し、経時的に細胞数鞍、細胞周期、テロメラーゼ活性、hTERT mRNA発現量を測定した。抗癌剤の効果と一致してテロメラーゼ活性並びにhTERT mRNA発現量の低下が5-FU、DOX、CDDPでは認められた。しかし、CPT-11では薬剤添加24時間後にテロメラーゼ活性並びにhTERT mRNA発現量の一過性の上昇が認められ、その後低下する結果が得られた。いずれの薬剤においても細胞周期の変動とテロメラーゼ活性並びにhTERT mRNA発現量との間に関連を認めなかった。また、テロメラーゼRNAサブユニット(hTR)、テロメラーゼ付属蛋白質p80(hTEP1)の発現量と抗腫瘍効果との間にも関連を認めなかった。 胃癌培養細胞株MKN-28をヌードマウスに移植し、in vivoでも同様の検討を行ったが、5-FU、DOX、CDDPでは殺細胞効果を反映してテロメラーゼ活性、hTERT mRNA発現量の低下が認められたのに対し、CPT-11では投与1日後にテロメラーゼ活性並びにhTERT mRN発現量の一過性の上昇が認められた。 以上の検討から、テロメラーゼ活性を調節している因子としてはhTERTが最も重要であることが示唆された。デロメラーゼ活性並びにhTERT発現量は抗腫瘍効果に一致して低下するものの、一部の薬剤では一過性に上昇する場合があり、臨床的に効果予測に応用するには注意を要するものと思われた。
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