研究概要 |
【背景と目的】真性膵嚢胞においては腫瘍性および非腫瘍性の鑑別が必ずしも明確でない。また腫瘍性の膵嚢胞を構成する上皮には、種々の程度の異型を示す上皮がみられるが、どの上皮からが腫瘍成分であるかについては一定の見解が得られていない。我々はクロナリティ解析の手法により、上皮の異型度別に腫瘍性病変の特定を試みた。 【対象と方法】膵管内粘液性乳頭腫瘍7例(腺腫3,癌4)、粘液性嚢胞腫瘍2例、漿液性嚢胞腺腫1例、膵リンパ管腫1例を対象とした。病変のDNAの採取は、フォルマリン固定標本からマイクロダイセクション法にて組織を形態学的異型度に分類して行った。クロナリティの評価は、X染色体不活化の原理を用いた方法(PGK遺伝子の多型性を利用)と、K-rasの点突然変異(codon12、13)を解析して行った。 【結果】真性膵嚢胞の上皮は形態学的異型度が強くなるにつれて、モノクローナルな病変と、K-rasの点突然変異のみられる病変の頻度は高くなる傾向がみられた。 【総括】膵嚢胞の上皮において腫瘍性性格を示すものは、形態学的に過形成以上の上皮であり、異型のない嚢胞上皮の大部分は腫瘍成分ではないと考えられた。
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