(目的)ラットタウロコール酸膵炎モデルを用いて内分泌細胞の機能変化を解析し、急性膵炎における内分泌動態を解明する。(対象と方法)タウロコール酸(TC)膵管内投与によるWistar系ラット膵炎モデルを作製。1%TC投与後1時間で膵を摘出、凍結切片によるGLUT2発現に関する検討を免疫組織科学的に行った。内分泌細胞機能変化を解析するためのin vitro実験系として、摘出した膵よりisletを単離し、グルコース刺激によるインスリン分泌能を検討した。(結果)TC投与による膵炎は病理組織学的に急性浮腫性膵炎であった。血清アミラーゼ、リパーゼ、血糖は有意に高値を示しており、急性浮腫性膵炎初期においても耐糖能障害が惹起されるものと考えられた。単離isletにおけるグルコース刺激によるインスリン分泌能をみると、膵炎群でインスリン分泌濃度は有意に低下していた。isletにおけるGLUT2発現に関する検討では、コントロール群、膵炎群ともにGLUT2はislet cellの細胞膜においてびまん性に発現を認め、両群間に差は認められなかった。(結語)急性膵炎で認められる耐糖能低下はインスリン分泌能の機能異常が一つの原因として考えられ、インスリンシグナル伝達系に何らかの障害が生じている可能性が考えられた。
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