目的 癌親和性薬剤投与後の超音波照射により抗腫瘍効果を検討しているが、今回は、以前からの検討を元に総合的な効果の判定を行い、今後の超音波化学療法の改善の一助にしたい。 超音波化学療法を転移性肝腫瘍と乳癌術後局所皮膚再発の症例に施行した。 方法 照射プロトコルは前年と同様に設定した。 効果の判定は、転移性肝腫瘍に対しては経時的に腫瘍マーカーとCT、乳癌症例に対しては腫瘍マーカーと肉眼所見をみた。さらに癌親和性薬剤を投与後の光過敏症に対する対処を検討する。以前行っていた暗所の滞在を、衣服による遮蔽に変更した。 結果 照射直後より血清CEA値は減少した。同時期に行った腫瘍径の計測では変化が見られなかった。 転移病巣は皮膚に密着した腫瘍に対しての方が、腫瘍径の小さな腹壁に密着しない腫瘍に対して減少幅が少なかった。腫瘍マーカーの経時的変化では、照射終了後約3週間後から、その値は増大した。照射により、腫瘍マーカーは減少する。照射により、乳癌術後局所再発の所見は改善する。照射後一定期間を経過すると、腫瘍マーカーや局所所見が元に戻ってしまう。画像による腫瘍径は腫瘍マーカー値と相関はなく、効果を反映しなかった。光過敏症に対する暗所滞在に比べて、着衣による遮蔽は、精神的苦痛の面においては問題ないが、完全遮蔽が困難であり、一部露出してしまうことにより、帯状の日焼けが出来てしまう。 考察 腫瘍マーカー値の変化から、超音波照射する場合、照射プローブが腫瘍に密着した方が、照射効果は高いことから、今後さらに照射経路の改良が必要である。併せて、超音波強度、波形などの機械の改良も必要である。暗所滞在および着衣による光過敏症に対する対応は限界があり、フォトフィリン以外の、光過敏症の発生しない、癌親和性薬剤の開発が必要である。
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