研究概要 |
[目的と方法]:食道扁平上皮癌におけるeIF4Eの発現の意義を明らかにするために手術により切除された40例の食道癌組織に免疫組織染色を行い,同時に採取した腫瘍組織からRT-PCRにてm-RNAを,western blot法によりeIF4E蛋白の発現を測定することを試みた. [成績]:免疫組織染色ではeIF4Eの発現は癌細胞の細胞質に瀰漫性にみられ,腫瘍の先進部に発現が多い傾向があったが腫瘍周囲の正常食道粘膜にはみられなかった.発現の程度により高度,中等度,軽度〜陰性の3群に分類した.高分化型の扁平上皮癌20例と中低分化型の扁平上皮癌おのおの20例で発現を比較すると高分化型で高度の発現が20%,軽度から陰性が60%であった.一方,中低分化型では高度発現が60%でみられた(P=0.002).また,リンパ節転移陽性例では高度発現が50%にみられ,転移陰性例では高度は10%であった.western blotやRT-PCRの検討ではサンプリングの部位や数に限界があり,症例数の少ないこともあり,統計学的な有意差はいまだ見られていない.また,in situ hybridizationによるmRNAの発現も10種類ほどのprobeで検討したが満足な結果は得られていない.また,同時に測定したp21,cyclin D1,VEGF,thymidine phosphorylase,FGFの発現との関連性の検討ではeIF4Eの発現は血管新生増殖因子とされるVEGFやPD-ECGFなどのサイトカインと正相関して発現する傾向が窺われた.さらに血管密度やKi67などの核蛋白関連抗原の発現との関連性も検討している. [結語]:食道扁平上皮癌におけるeIF4Eの発現は腫瘍の生物学的悪性度や転移能との関連性が示唆された.
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