胆管上皮癌は悪性度が高くその診断、治療は困難である。我々は胆管上皮癌の増殖因子、及び抑制因子を同定し、その早期診断、治療を可能にするべく研究を進めている。胆管上皮癌の増殖因子が、正常胆管上皮と同じサイトカインHGFIL-6であることを我々は見いだしたが、さらに上皮細胞の増殖抑制因子TGFβ1と胆管癌の関係を明らかにしつつある。 TGFβ1は正常胆管上皮の増殖に対して抑制的に働くことは、すでに我々が発表しているが、胆管上皮癌とTGFβ1の関係は不明な点が多かった。そこでまず胆管上皮癌がTGFβ1およびTGFβ1レセプターを産成していることをCell Lineを用いてRT-PCRで確認した。さらに肝内胆管上皮癌の切除標本を用い、TGFβ1およびTGFβ1レセプターのmRNAがin VIVOでも発現していることを見いだした。この様に胆管上皮癌はTGFβ1を産成しさらにレセプターを持つことから、TGFβ1は胆管上皮癌に対しオートクライン、パラクラインに作用すると考えられた。そこでTGFβ1に対する中和抗体を胆管上皮癌に作用させると、胆管上皮癌の増殖が抑制されることが解った。さらに胆管上皮癌にTGFβ1を作用させると、低濃度では胆管上皮癌の増殖を若干抑制するが、高濃度ではその増殖を促進することを見いだした。 すなわち以上より胆管上皮癌はTGFβ1を産成しオートクラインで増殖していると考えられた。 このことは胆管上皮癌の臨床像をよく説明出来る。すなわち胆管上皮が癌化するとそれまで抑制因子であったTGFβ1を増殖因子とし急激に増殖し、自己で産成したTGFβ1により周囲の肝細胞等をアポトーシスさせるとともに繊維化を進め癌増殖に必要な環境を作っていくと考えられる。 現在我々はTGFβ1のシグナルトランスダクションを中心にTGFβ1による胆管上皮癌の増殖メカニズムの解明を進めている。
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