Caco-2細胞株の継体培養を継続し細胞株を維持している。直径6.5mmの2-chamber systemにおいて、コラーゲン処理した3μm孔のフイルターの裏面に3×10^5個のCaco-2細胞を播種して2〜3週間単層培養を行うことにより、十分分化発育したCaco-2細胞による腸上皮のTight junctionが完成し、上皮間電気抵抗(TEER)が400-600Ω・cm2程度に安定した。 分化が完成したと考えられる2〜3週間目に、SDラットより腸管関連リンパ球(GALT=Gut Associated Lymphoid Tissue)を採取して、基底膜側よりCaco-2単層培養細胞に添加した。GALTとしては、パイエル板より採取したPPL、および粘膜上皮内から採取したIELを用いた。添加するリンパ球数は、preliminalyな実験によりフィルター1個あたり1×10^6とした。GALT採取前にラットに全く炎症性の刺激を与えなかった場合には、3日間のco-cultureによってもTEERは全く変化しないことが明らかとなった。そこで次に炎症性腸疾患の動物モデルの一つと考えられる、インドメタシン投与による腸炎モデルの腸管を用いて実験を行った。適切な腸炎を発症せしめるためのインドメタシン投与量はpreliminalyな実験により7.5mg/kg皮下注×2日間投与とした。この投与によってほぼ80%の頻度で、腸管が菲薄化、脆弱化して粘膜の炎症を来した腸炎モデルが作成されたが、このモデルより採取したPPLおよびIELをCaco-2単層培養細胞と3日間co-cultureしてもTEERの有意な変化は観察されなかった。現状の条件ではGALTとCaco-2腸管上皮細胞との間に明らかなcell-cellular interactionを生じる条件が得られていない。 そこで現在、小腸移植等の移植免疫領域で、グラフト拒絶反応として生じる腸管炎症の機序として働いていると報告されている抗CD3抗体によるリンパ球刺激作用を用いて、腸管内のGALTの刺激を行い、その結果として生じる腸管上皮リンパ球が腸管粘膜透過性に及ぼす影響を検討しているところである。
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