研究概要 |
癌の化学予防に関する研究は,近年の癌の基礎的研究の分野で重要な課題となっている。今回ラット大腸発癌モデルを用い,発癌剤1,2-dimethylhydrazine(DMH)投与開始時から,化学予防剤として米糖より抽出した免疫賦活剤アラビノキシランの投与を行う群と発癌剤のみ投与するコントロール群を作成して病理組織学的に化学予防の効果を検討した。方法:6週齢雌性Wister系ラットにDMH20mg/kgを週2回10週連続投与した。DMH投与当日からアラビノキシラン50mg/kgを飲水中に混ぜて投与する治療群(10匹)とDMH投与のみのコントロール群(10匹)を作製した。DMH初回投与から30週目に屠殺剖検し,大腸肛門を1塊として摘出し,全大腸を近位と遠位に2分割して,ホルマリン固定した。化学予防の効果はまず前癌病変とされるaberrant ctypt foci(ACF)の発生数を0.2%メチレンブルー染色後,全大腸(約20cm長径)にわたり計測し,数量化して判定した。結果:コントロールの近位大腸においてはACFの1crypt:321個,2crypt:243個,3crypt:159個,4crypt以上:94個であり,遠位大腸では1crypt:1029個,2crypt:922個,3crypt:949個,4crypt以上;854個であった。一方,治療群の近位大腸では1crypt:179個,2crypt:233個,3crypt:142個,4crypt以上;54個であり,遠位大腸では,1crypt:56個,2crypt:146個,3crypt:30個,4crypt以上;4個であった。即ち,治療群はコントロール群に比べ全大腸にわたりACFの発生数の減少を認め,特に遠位大腸においては有意差を認めた。結論:DMHによるラット大腸発癌モデルにおいて,アラビノキシランは化学予防物質になり得る可能性が示された。
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