研究概要 |
胃癌におけるTIMP-1の新しい転写因子であるCRTFの胃癌における意義について検討し、平成14年度までに以下の結果を得た。 まず、平成12年度は、前立腺癌の培養細胞株であるPC-3において同定されたCRTFが胃癌培養細胞であるMKN-45をはじめとする消化器癌培養細胞株においてもCRTFを介したTIMP-1産生経路の存在を明らかにした。また、胃癌培養細胞株MKN-45,MKN-28にTIMP-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターAdvCMV TIMP-1のin vitro感染実験を行い、TIMP-1の導入効果を明らかにした。平成13年度は、MKN-45を用いてinvasion assayを施行し、TIMP-1導入による浸潤抑制効果を認め、MKN-45より高頻度腹膜転移培養細胞株作成を開始した。 平成14年度は高頻度腹膜転移培養細胞株(MKN-45P)を樹立し、血清腹水を伴う胃癌腹膜播モデルを作成した。MKN-45PをTIMP-1Adv感染群,Lac-zAdv感染群,Non-Virus(NV)群に分けヌードマウス腹腔内に投与し、6週後の体重,腹膜播種性結節の数、重量,血性腹水の有無について検討した。TIMP-1Adv感染群は、Lac-zAdv感染群,NV群に比較し、結節数重量は有意に減少し、TIMP-1Adv感染群には血性腹水は認められなかった。体重は有意差は認めなかったが、TIMP-1感染群は、Lac-zAdv感染群,NV群に比較し、減少傾向は軽度であった。これより胃癌細胞へのTIMP-1遺伝子導入が胃癌腹膜播種を抑制すると考えられた。今後、胃癌におけるTIMP-1の転写因子の意義を検討するため、現在MKN-1,KATO-III, MKN-28,MKN-45,MKN-45Pの培養上清,腹膜播種モデルの血性腹水,TIMP-1Adv感染群およびコントロール群の腹膜結節からの抽出蛋白中のIL-1β,IL-6,IL-8,IL-10,TGFβ,TNFαなどのサイトカインの定量をELISA法により行い、TIMP-1,MMPsとの関連を検討中である。
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