研究概要 |
高度進行・再発食道癌及び諸種癌患者よりICによる同意を得て、手術時摘出標本や生検組織、癌性胸水・腹水より腫瘍細胞を採取し、IL-2の存在下で自己末梢血リンパ球と混合培養して癌特異的キラーT細胞の誘導を試みた。その結果、化学/放射線療法既往患者からも活性化リンパ球が誘導され、活性化リンパ球中にはCD4-CD8+のキラーT細胞が存在し、HLA class I拘束性が認められた。 これらのキラーT細胞を用いて、遺伝子発現cloning法により癌拒絶抗原遺伝子の同定を行った。その結果、食道癌患者よりHLA-A24及び-A26拘束性のSART-1遺伝子を、またHLA-A24と結合性の癌拒絶抗原遺伝子が20数種類同定され、それら遺伝子からSART-2,SART-3,ART-1,AKT-4,Cyp B,p56-lckの癌拒絶抗原ペプチドが同定された。さらにHLA-A2結合性癌拒絶抗原遺伝子も同定し、HLA-A2拘束性のSART-3,CypB,p56-Lck,ppMAPkkk,WHSC2,UBE2V,HNRPLの癌拒絶抗原ペプチドを同定し、これらペプチドをGPM gradeで依頼合成した。そこで、新GCPに基づいて第I相臨床試験のプロトコールを作成し、本学の臨床試験安全性評価委員会並びに倫理委員会に提出して臨床試験を開始した。SART-1は4例に投与したが、キラーT細胞の前駆細胞頻度の増加を2例に認めた。また、SART-3やLckでも約70%にキラーT細胞前駆体頻度の増加を認め、重篤な有害事象の発現は認めていない。 一方、新たな免疫評価指標の検討では、テトラマーは評価方法としては優るが安定性や保存期間に問題がみられた。そこで、新たな免疫評価法として新細胞性免疫定性法を考案し、その有用性について詳細に検討中であるが、比較的良好な成績が得られつつある。
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