研究概要 |
高度進行・再発食道癌及び諸癌患者より、文書による説明と同意を得て、摘出臓器や生検組織、癌性胸腹水中より腫瘍細胞を採取し、IL-2の存在下で自己末梢血リンパ球と混合培養して癌特異的キラーT細胞を誘導した。誘導された活性化リンパ球は、CD4-CD8+キラーT細胞が存在し、HLA class I拘束性を認めた。これらキラーT細胞により、遺伝子発現cloning法で癌拒絶抗原遺伝子の同定を行い、HLA-A24/A26拘束性のSART-1遺伝子を、また30数種類の癌拒絶抗原遺伝子とペプチドが同定された。GPM gradeのペプチド30種を依頼合成し、CTL precursor-orientedペプチドワクチン療法の第I相臨床試験のプロトコールを作成した。このプロトコールの実施にあたっては、本学の臨床試験審査委員会および倫理委員会より承認を受けた。当試験では、重篤な有害事象の発現は認めていないが、食道扁平上皮癌の効果は乏しく、試験期間中にいずれもPDと判定された。また、今回新たにMRP3癌拒絶抗原遺伝子とペプチドを同定し,臨床視聴可能か否かを検討中である。一方,新たな免疫評価指標の検討では、テトラマーは簡便で有用であるが安定性や保存期間に問題がみられた。そこで、新たに新細胞免疫検査法を考案し、その有用性を検討した結果、限外希釈法とほぼ類似の成績が得られ,、現在実施中の臨床試験に使用している。現在までの成績では、食道癌は進行が速いためキラーT細胞前駆体数増加を認める以前に進行してPDとなり、現有のペプチドのみで治療することは困難であった。この傾向は、胃癌や膵臓癌患者でも同様であり、増殖が急速な癌腫に対しては、新たな治療対策を立てなければならないと思われた。
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