研究概要 |
本年度には,インフォムトコンセントを得られた食道癌の患者11名に対し、自己癌特異的キラーT細胞(CTL)を誘導した後,癌局所の自己活性化リンパ球を投与した.本法にて癌組織より自己癌単細胞化の効率は平均採取腫瘍量は0.29±0.43g/回で,その中に含むviableの癌細胞数は0.5〜2.0x10^7であった。これら自己癌細胞は、放射線照射し、不活化させた後に刺激癌抗原として用いた。同患者自己末梢血リンパ球と自己癌細胞をIL-2 100U/ml存在下で約2週間混合培養を行い、癌特異性を有するCTLが誘導できた症例は計5例(45%)であった.安全性が確認された活性化リンパ球のみをeffector細胞(LAK細胞,NK細胞とCTL細胞またその前駆細胞)として標的とする局所腫瘍や転移リンパ節内及びその周辺に局注した.また,癌性胸・腹膜炎症例に対しては胸腔や腹腔に直接注入を行った。本治療は患者状態が許容であれば約1回/2週のペースで継続的に行った.臨床効果は原発と再発転移食道癌11症例ではCR1例,PR3例,SD2例とPD5例であった.治療期間並びに観察期間内におけるすべての有害反応についてJCOG-CTCに基づき評価した.本治療後に11名患者の中7例に一時的な発熱がみられた.また,1例の患者に血圧低下(Grade III)ともう1例の患者には嘔吐と下痢(Grade II)を認めた.)患者生体内免疫反応性変化の評価については治療後の患者を有効群(CR+PR症例;n=4),不変群(SD症例;n=2)と無効群(PD症例;n=5)に分け,自己活性化リンパ球投与患者における免疫反応の変化を投与前後の白血球数,末梢リン球数やリンパ球分画(CD3,CD4,CD8,CD16)を用いて検討した。,3群間における治療前と2回及び4回治療後の末梢血中の白血球数,リンパ球数,CD3^+,CD4^+とCD8^+T細胞数においては有意な変化がみられなかった.CD16^+T細胞数のみが有効群症例において,治療前に比べ,治療2回目と4回目後に有意な増加を認められた.また,無効群に比べてもCD16^+T細胞数は治療2回目と4回目後に有意に増加した.
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