研究概要 |
平成13年度はわれわれが前年度の癌患者誘導活性化リンパ球の性状を総括し,その癌局所投与の臨床効果を中間評価し,発表した.(Toh U et al. Proc Am Soc Clin Oncl(abstr 1520),2000)その臨床効果はIn vitroのリンパ球殺癌細胞作用や投与リンパ球との相関関係が認められなかった.(Toh U, et al., Clin Cancer Res, December 2000)また,本治療法の治療効果は治療前では活性化リンパ球の自己癌細胞特異性に相関し,治療後の末梢血中リンパ球ではCD16+/CD56+Tリンパ球の増減に関連している可能性が示唆された. また,患者自己活性化リンパ球の反復局所投与後には患者生体における宿主癌腫瘍免疫の変化を経時的に検査し,自己癌に対する特異的免疫状態が誘導できることが確認できた.(第101回日本外科学会,第55回消化器外科学会,唐ら)さらに,本法の治療効果向上を目指し,細胞誘導方法を見直し,治療法の改良を試みた.具体的に食道癌は他の消化器癌と同様,組織適合抗原(MHC)の発現は低下し、抗原提示能は減弱していることが多く、腫瘍免疫の樹立やCTLの誘導が困難と考えられている。癌抗原の提示能を強め,自己活性化リンパ球をより効果的に使用するために,IFN-gammaとの併用を試行し始めている.また,今はex vivoで自己末梢血リンパ球と自己DC細胞との共培養を考案中で,さらに,これらDC細胞とCTL細胞との併用で治療効果を向上できるかどうかについての臨床試験を検討している.他の固形癌(胃癌,大腸癌など)についてもすでに同様に治療を開始しており,その治療効果を待たれる.
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