研究概要 |
【目的】平成13年度までの実験にて大動脈ステント挿入3日後に大動脈の遮断なしに大動脈壁の切除が可能であることが確認できたため、本年度は挿入直後に大動脈の遮断なしに大動脈壁の切除がどこまで可能か実験した。 【実験方法】径0.35mmのステンレスワイヤーを用いZ-ステントを作成,ウーブングラフト人工血管を6-0ナイロンで縫合固定し長径5cmのステントグラフトを作成した。体重約20〜27Kgの雑種成犬を用い,全身麻酔下に腹部大動脈より16Frシースを使用して胸部下行大動脈にステントグラフトを内挿留置した。ステントグラフト留置直後に開胸を行い,留置部大動脈壁を長径1cm,まず1/4周切除,更に出血の有無により、1/2まで追加切除した。【結果】大動脈壁部分切除はステント挿入直後でも可能であった。しかも切除面からの出血は認めず、出血は切除断端の大動脈壁(外膜)からのものであった。また挿入後1または2週後の例より層の剥離は容易であった。切除に伴うステントグラフトの損傷やmigrationは認めなかった.切除範囲は1/4までは何ら問題はなかった.1/3周まで切除したがそれ以上の切除ではステントのずれが懸念され1/2周切除は施行しなかった。 【臨床研究と今後の展望】動物実験結果を踏まえ、大動脈浸潤食道癌における大動脈ステントの有効性を確診したが、現在のところ大動脈合併切除予定の食道癌手術適応患者は認めていない。しかし高度進行(大動脈浸潤を含め)食道癌患者の化学放射線療法中に大動脈穿孔による出血死亡例を経験し、これらの症例には緊急的に大動脈ステント挿入が救命のための唯一の方法と考え、その体制作りに着手している。
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