研究課題/領域番号 |
12671287
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研究機関 | (財)癌研究会 |
研究代表者 |
武藤 徹一郎 財団法人 癌研究会, 癌研究所, 部長 (20110695)
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研究分担者 |
堀 信一 東京大学, 医学部, 助手 (90282631)
渡辺 聡明 東京大学, 医学部, 助教授 (80210920)
加藤 洋 財団法人 癌研究会, 癌研究所・病理部, 部長 (20010473)
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キーワード | 直腸癌 / 放射線照射 / 癌浸潤距離 / 簇出 / tumor deposit / 微小転移 |
研究概要 |
目的:下部直腸癌はQOLの面から肛門機能温存が必要とされる腫瘍である。一般に術前放射線照射後切除例では局所再発率の低下や、予後の改善が臨床的に明らかとなっているがその機序は明らかとなっていない。詳細な病理学的検討によって、これを明らかにすることを目的とした。 方法:1)放射線照射後に外科的切除が施行された(照射群)47例中の粘膜下層以下における癌細胞の浸潤距離を測定した。2)照射例中の25例で直腸周囲脂肪織内微小癌細胞の遺残(tumor deposit)や腫瘍先進部の簇出の有無を検討した。3)さらにリンパ節微小転移の頻度を調べた。照射群に対し非照射群は全てマッチトコントロールとした。 結果:1)肛門側壁内浸潤の平均距離は非照射群で2.873mm±4.90、照射群では0.368mm±0.927と有意に縮小していた(ρ=0.001)。2)tumor depositは非照射群で5例(20%)に認められ、照射群においては認められなかった(ρ=0.018)。簇出については非照射群で9例(36%)に認められたのに対し、照射群では認められなかった(ρ=0.0009)。3)微小転移は非照射群で11例(44%)に、照射群で2例(8%)に認められた(ρ=0.0037)。 考察:術前放射線照射により、原発巣における癌細胞の組織学的浸潤範囲は長軸方向で著明に減少することより、肛門機能温存術の適応拡大が期待される。また、照射群ではtumor depositや簇出が消失しリンパ節微小転移も減少することが判明し、局所再発の低下に関与すると考えられた。以上の結果は下部直腸癌治療における術前放射線照射の有効性を病理組織学的に示唆するものと考えられた。
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