肝硬変症は種々の原因による肝臓の最終的な状態と考えられるが、近年原因除去が可能になってきた。肝臓は強力な再生力を有するが、この肝再生により肝硬変が長期的にどう変化するかという検討は少ない。肝硬変モデルで肝硬変症の改善を目的として肝部分切除術(肝切)を施行し、再生肝臓が長期的に肝硬変から変化するかを形態的および機能的に検討した。【方法】ラットでthioacetamideで肝硬変を作成した。正常(NORM)と肝硬変(LC)で70%肝切を施行し21日までの変化を形態的および機能的に検討し、LCの肝切群と単開腹群で術後60日の残存肝を比較した。形態的には肝重量比、PCNA陽性率、肝線維化率で評価し、機能的にはインドシアニングリーンの消失率(ICG-k)、aminopyrineクリアランス(CLamp)で評価した。【結果】肝重量比はNORMでは肝切により減少し21日で前値に戻ったが、LCでは21日でも前値まで回復しなかった。PCNA陽性率はLCで低値であった。ICG-k値はNORMでは肝切後2日で最低となり7日で回復した。LCでは5日で前値に復した。CLampはNORMでは肝切により低下し21日でも回復は遅れた。LCでは7日で回復した。肝重量あたりのCLampはNORMでは21日でも回復は遅れたが、LCでは低下することなく機能的再生が先行した。LCでは単開腹群と比較して肝切により長期的に肝線維化率の改善効果はなかったが機能的肝再生の促進傾向が認められた。【総括】LCでは肝機能総量は低下していた。NORMは機能的肝再生は形態的再生に遅れていたが、LCでは形態的肝再生は緩徐であり機能的肝再生が先行した。LCでは長期的に線維化の改善効果は認められなかったが機能的肝再生の促進傾向が認められた。【結語】肝硬変症の肝部分切除術後の肝再生による機能的回復の可能性が示唆された。
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