消化器系癌腫に対し、特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導を行い、これをエフェクターとした養子免疫療法を研究してきた。高度進行癌では宿主内において自家癌細胞に対し、免疫寛容が成立していると考え、生体内でのサイトカイン動態と、CTL誘導時のin vitro内のサイトカイン動態を比較した。癌性胸腹水症例より採取した胸腹水と、通常手術後にドレーンから採取される腹水中のサイトカインを比較検討した。癌性胸腹水10検体、術後腹水10検体を比較したが、Th1サイトカインであるIL-2、IL-12、IFNγはともに低値で、Th2サイトカインIL-4、IL-6はともに高値を示した。IL-10についても検討したが、ばらつきが多かった。また、可溶性IL-2receptorは癌性胸腹水にて高値を示す症例が散見された。血漿中の可溶性IL-2receptorも測定した。遠隔転移のある高度進行消化器癌で高値を示し、可溶性IL-2receptorは悪性リンパ腫に限らず、消化器系癌腫の宿主免疫動態を反映するものと考えられた。CTLを誘導するin vitroにおいて、OK432が時として有効であることは他の研究者も発表しているが、癌性胸腹水症例のin vivo内の投与ではIFNγは増加する傾向があるものの、他のTh1サイトカインには影響を認めなかった。CTLの誘導に関しては自家腫瘍細胞株を樹立できた症例に対し、alternative pathwayの概念に沿った2段階混合刺激培養(MLTC)で誘導を試みた。これまでの研究からCD14^+細胞の多寡がCD4^+Tリンパ球の分化に強い影響を与えていることが判明している。これは培養上澄液に含まれるサイトカインの分析より示唆された。CTLをエフェクターとする養子免疫療法については当研究機関内の倫理委員会の承認を得て自家腫瘍細胞株を樹立した大腸癌絶対非治癒切除症例を対象に行った。臨床効果判定はminor responseにとどまった。
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