研究概要 |
体重35〜40kg程度の羊に胸骨正中切開を行い、通常の人工心肺による体外循環を開始したのち肺を摘出して肺動脈に送血し肺静脈から脱血する肺単独潅流モデルを作成した。まず肺潅流血液量を15ml/kg/分として送血ラインの圧モニターを介して肺動脈圧を記録して経時的に肺動脈血管抵抗値を測定した。また潅流肺は人工呼吸器により換気(10xbody weight(kg)cc、15回/分)して呼吸管理モニターを用いて呼吸パラメーターの変化も経時的に記録した。1時間の肺潅流中に潅流前、潅流10分、30分、60分後にサンプリングした肺動脈血、肺静脈血中のchemical mediator (Interleukin-6,顆粒球エラスターゼ)を測定した。その結果、体外循環により経時的に顆粒球エラスターゼが増加し、肺動脈圧、肺血管抵抗の上昇をもたらすことが明らかとなった。肺組織では潅流が長くなるにつれて肺胞壁の浮腫、肺胞腔への白血球やフィブリン様物質の流出が広範囲に認められた。次に肺潅流回路に白血球除去フィルターを組み込み白血球除去の効果をみたところ潅流血中の顆粒球エラスターゼが低下し肺機能保護に効果のあることが示唆された。これまでの結果より、体外循環中の肺機能障害は循環血中の活性化された白血球が肺胞内に集積し放出されたchemical mediatorとともに循環障害や換気効率の低下をきたしていると推測される。そのため体外循環中の肺保護には白血球除去のほか、白血球の脱顆粒阻止因子や白血球-血管内皮接着分子阻害物質投与などが有効と考えられる。
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