【目的】異種心臓移植(ハムスターからラット)における拒絶反応の病理学的所見、浸潤細胞の同定、およびアポトーシス関連蛋白の経時的発現を明らかにする。また、アポトーシスと拒絶反応の関係を明らかにすることにより生着期間延長の方法を検討する。【方法】Golden Syrian Hamsterをドナー、Lewis Ratをレシピエントとし異所性異種心移植モデルを作成した。移植後0、4、8、24、48時間に移植心を摘出し、HE染色、TUNEL染色、抗Fas抗原抗体による免疫染色を行った。【結果】1)Hematoxylin-Eosin染色においては、4〜8時間後の標本に大きな形態的変化は認めなかった。24時間後より血管周囲に多核球様の炎症性細胞の浸潤を認めはじめ、48時間後には特に心外膜下及び心内膜下の心筋に巣状に浸潤していた。リンパ球の浸潤は全経過を通してわずかに認めたのみだった。48時間後には心筋細胞の壊死像を多数認めた。4〜48時間までの標本に血栓を伴った血管炎は認めなかった。2)TUNEL染色においては、移植後4時間から48時間まで心内膜、血管内皮細胞核が陽性であった。3)Fasに関しては、移植後4時間から8時間まで心内膜、血管内皮細胞核がFas陽性で移植後8時間以降は免疫反応は減少した。【結論】concordant異種移植では、血管炎を主体とし血栓形成を伴わない心筋壊死が拒絶反応の主体であった。これは、浸潤細胞が多核球主体である点で、同種移植と大きく異なっていた。また、移植後数時間の超急性期の血栓形成による心筋壊死が主体となるdiscordant異種移植の病理像とも大きく異なる。concordant異種心移植における拒絶反応では血管炎などの形態的変化が認められる以前にFas抗原によるアポトーシスが心内膜、血管内皮で進行しており、急性期アポトーシス抑制により拒絶反応抑制効果が得られる可能性が示唆された。
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