我が国の心移植治療はドナー確保が厳しく普遍的治療法としては問題が残る。補助循環治療は心室負荷軽減後心機能が回復し離脱に至る症例も散見されることから有用な方法であるが未だ血栓形成と感染症が大きな問題であり、長期使用が困難である主な理由となっている。従来、抗血栓性向上に改良が加えられてきたが、補助循環時の高サイトカイン血症による組織因子発現について従来積極的な対策はなされておらず、補助循環における血栓発生抑止法開発に重要と考えられる。 本研究の目的は補助循環施行期間中に血管内皮細胞に生ずる組織因子の発現を血管内皮細胞に限定して抑制可能かどうかを検討し、組織因子発現抑制が補助循環中の血栓形成抑制に有効かを検討することにある。しかしIn vivoにおいて血管内皮選択的組織因子発現抑制が困難であることが判明し、In vivoにおいて流血中の血管内皮前駆細胞を人工物に固定することにより、生体適合性を高め補助循環における血栓発生抑止法開発が可能ではないかと考え、人工物へのCD34抗体固定による血栓付着予防効果を検証した。
|