研究概要 |
近年肺気腫に対して気腫肺の約30%を切除するLung volume reduction Surgery(LVRS)においてみられる問題点は以下のごとくである。1.LVRSの適応となる肺気腫はその気腫性変化の強い部分が比較的限局しているもののみであること、2.両側にしろ片側にしろ手術は一側肺に対し1回しか行えない、3.手術合併症として長期におよぶ肺瘻があり呼吸不全に至る事がある、4.手術後残存肺の気腫性変化が進行し、2〜5年で術前のFEV1.0に戻ってしまうこと、等である。LVRSの一方法として胸膜へのLaser照射法がみられたが、胸膜の収縮により全体のvolumeを減らしたものの、肺気腫を消失させる点では十分とはいえず、外科的気腫肺切除に比較してその改善効果は劣っていた。これらの問題点を解決する手段として経気管支鏡的に気腫肺を凝固収縮させvolume reduction効果を得ようというのが本研究の目的である。 平成12年度の研究実績 1)Diode Laser Indigo830による肺組織焼灼効果の検討 ビーグル成犬(8kg)に対し片肺分離換気下に正常肺を無気肺の状態にしてDiode Laser Indigo830を用いて80℃,5分間照射したところ、肺の凝固範囲は平均25×10mmであり、90,100℃のそれとほぼ同等で、70℃,5分の15×5mmより広い範囲が焼けた。また90,100℃では一部に壊死層が確認された。静肺コンプライアンスは21.2ml/cmH_2Oが7.1ml/cmH_2Oと33.5%に低下した。 2)オリンパス光学との共同研究によるheat probeの開発 本実験に適したheat probeとはprobe先端の温度調節が行なえること,楕円状のheat probeで組織に対し損傷を来たしにくいこと,肺気管支に対し選択的にprobeが誘導できるflexibilityを有していることである。そこで我々はオリンパス光学との共同開発でHeat probe CD-120Uを開発した。これは上記条件を満たすもので先端径2.8mm温度調節能に優れ、選択的に肺末梢まで送れるものであった。実際の実験では80℃ 7minの焼灼で最も効果的な組織凝固が得られた。
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