研究概要 |
平成13年度の研究実績 1)Heat Probe CD-120U(Olympus)による肺胞壁凝固の至適条件 前年度に開発したHeat Probe CD-120U(Olympus)による肺胞壁の組織凝固・繊維化にとって至適条件は、80℃,7分ということが判明したが、本年度は更に肺の状態がどのように影響するのかを検討した。条件として(1)膨張肺で自発換気がされた状態(2)膨張肺で片側主気管支がフォガティーバルーンカテーテルにより閉塞され、換気が停止した状態(3)一部胸壁に穴を開け開胸状態にして片肺を完全に虚脱させた状態、の3種類の状態を作成した。その結果(1)ではまったく肺内温度の上昇がみられず、焼灼効果は得られなかった。(2)の条件では多少の組織学的変化が認められた。一方(3)ではかなり明瞭な焼灼効果をみとめその範囲も広かった。ただしprobeが直接接したところはかなり強い凝固をきたしており、熱の伝導深度によってだんだんと凝固程度が弱まっていた。以上の結果より肺虚脱下で加熱することが、最も効率がよいことが判明した。 2)ビーグル犬における肺気腫モデルの作成 実際の治療対象となる肺は重度の肺気腫であり、正常組織と比較して組織凝固に到るためにはより大きな熱量と照射時間を必要とすると考えられる。そこで実際の肺気腫モデルを作成することが、その前段階として重要である。我々は様々な方法で肺気腫モデルの作成を試みた。蛋白分解酵素であるパパインを経気管注入して、作成された気腫の程度を肺機能検査(肺コンプライアンス,エラスタンス)および病理所見にて評価した。投与方法はパパイン50,350,700mgを生食30mlに溶いて気管支鏡にて直接気管内投与する方法とネブライザーにて吸入させる方法を取った。直接注入法では下葉気管支にのみにパパインが流れ込み、下葉優位の肺気腫が作成された。しかし700mgでは肺胞出血をきたし、肺気腫は作成されなかった。一方吸入法では肺全体に肺気腫がmildに作成され、700mg投与でも問題なかった。しかし50mg,350mgでは気腫の程度が軽く、モデルとしては的確ではなかった。これは肺機能検査でも証明された。以上より一部に肺気腫を作成し、同部位での組織凝固効果を見ることで、肺気腫に対する治療効果を評価できると考え、50mg下葉への直接投与法が、肺気腫作成にとって有効であると判断した。
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