研究概要 |
平成12年度では1.成人ラットの心筋細胞培養2.心筋細胞の確認3.左心室瘢痕形成4.心筋細胞移植5.移植心筋細胞の特質の検討を行うことを申請時に計画していた。 1.成人ラットの心筋細胞培養に関して・・・培養技術は問題無く、培養細胞の継代も問題無く実施できた。 2.心筋細胞の確認に関して・・・培養細胞の収縮蛋白(ミオシン重鎖,トロポニンI)の免疫染色を行い、培養細胞が心筋細胞であることの確認を行った。 3.左心室瘢痕形成に関して・・・左冠動脈結紮による心筋梗塞モデルを作成した。心筋梗塞モデルの瘢痕範囲の評価は心エコー図を用いて行った。梗塞作成4週間での心エコー検査では、左室は有意に拡大し、また梗塞部の壁運動は認められなかった。また梗塞部の組織学的評価も合わせて行った。 4.心筋細胞移植に関して・・・左心室瘢痕作成後4週目に、同系ラットの左室瘢痕部へBrDUでラベリングした培養心筋細胞の移植を行った。移植後1週、4週、3カ月に移植部位の組織検査を行い、心筋細胞の生着を確認した。 5.移植心筋細胞の特質の検討に関して・・・移植心筋細胞の増殖を形態学的に観察した。瘢痕部に移植した心筋細胞を採取し再び細胞培養を行った。繊維芽細胞等より心筋細胞を分離培養し、移植細胞の収縮蛋白の免疫染色を行った。その結果、収縮蛋白は染色され、増殖細胞が心筋細胞由来のものであることを確認した。一般に成人心筋細胞は増殖はしないとされており、我々の研究では増殖の可能性を示唆する結果を得ており今後の検討を要する。 6.追加検討項目・・・心筋細胞移植後1週、4週、3カ月後に断層心エコー検査にて心機能評価を行った。その結果、移植前には壁運動が認められなかった瘢痕部は移植後4週目には軽度の左室壁運動を認めるようになった。3カ月後では4週目と比し有意な壁運動の改善は認められなかったが、心筋細胞移植を行わなかった群に比し、左室の拡大は抑制された。 以上、実験はほぼ計画通りに実施できており、現在、実験分担者である松林をカナダ・トロント大学に派遣しており,最新の知見ならびに技術を修得させている。今後、骨髄間質系幹細胞から心筋細胞への分化を認めた細胞に発現する各種転写因子を培養成人心筋細胞へ転写し、正常心筋細胞への分化能を獲得するか否かを検討し、成人心筋細胞の増殖・分化能の検討を行う予定である。
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