研究概要 |
【目的】虚血性・拡張型心筋症の心不全症例に対する外科的手術法として左室形成縮小術が注目されているが,その生化学的なデータは十分でなく,今回ラットモデルを用いて検討を行った.【方法】(1)虚血性心筋症モデル:SDラットを全身麻酔下に左前下行枝(LAD)を結紮して虚血性心筋症を作製した.4週後に全身麻酔下の心拍動下でAkinesis部を縫縮法により左室形成術を行なったRepair群(R群)と開胸のみのSham群(S群)に分けた.両群間で術前後・1週間後・4週後に心エコーによる心内腔計測とミラーカテーテルを用いた左室圧測定を行い比較検討し、カテ後に儀死させ心筋のBNP mRNAをNorthern Blotを用いて測定した.(2)拡張型心筋症モデル:Dahlラットに9週齢より高塩食を摂取させ40週程で拡張型心筋症となり、全身麻酔下の心拍動下で左室自由壁部に左室縮小術を行なったVRS群と開胸のみのSham群(S群)に分け,上記のごとく測定した.【結果】(1):R群において左室拡張末期径(EDD)は9.7±0.8mmから7.4±0.9mmとVRS直後有意に減少し,1週間後ではその径は7.6±0.9mmに維持されていたが,4週後には再拡大がみられた.FS・E-maxは術直後と1週後でS群に比べ有意な改善みられるも,4週後には再悪化傾向がみられた.TauとLVEDPは1週後ではS群に比べ改善傾向みられるも4週後再悪化があった.BNP mRNAは1週後においてR群では有意な発現の減少が認められた(P<0.001)が,4周後では有意差は見られなかった.(2):VRS群においてEDDは8.6±0.6mmから7.0±0.7mmとVRS直後有意に減少したが,4週後まではその径は徐々に拡大し、S群とは差はなかった.FS・E-maxは術直後と1週後でS群に比べ改善し、4週後まで再悪化傾向にはあるがS群に比べ有意に良好であった.左室拡張末期圧容積関係はR群で術後有意な改善みられるも、4週後ではS群と有意さは無かった.【結論】両心筋症モデルで術後近接期に心機能の改善がみられ左室形成術の十分な効果が認めたが、遠隔期には心機能の悪化傾向があった.
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