本年度の実験の目的は 1.豚の肋間動脈がどの程度の径を持ち、どの程度まで剥離、使用可能か判断する。 2.内胸動脈との外径、流量の比較。 の2点である。 19kgの豚を使用し、全身麻酔下に実験を開始した。左第5肋間開胸にて胸腔内を観察した。第4肋間、第6肋間の側胸部の肋間動脈は0.3mm程度であり、非常に細く、剥離は非常に困難であった。流量を測定しようと試みるも、ほとんど索状であり、電磁流量計を使用し流量を測定したが径が細すぎるため測定できず、次に切離してのfree flowの測定を試みたが流量もにじみ出す程度であったため不能であった。続いて2.についての検討のため、胸骨正中切開し、左内胸動脈を剥離し、外径と流量を測定した。左内胸動脈外径3mm、電磁流量計で流量78ml/minであった。この段階で、形態学的、血行動態的には肋間動脈は内胸動脈に比し、径が細く流量も少なく、グラフトとして使用する事は困難であると思われた。先はどの開胸下は他の肋間の動脈の良好な視野が得にくかったので、正中創より肋間動脈を観察したが、心臓、肺が視野を遮り、剥離は困難であった。このため続いて上記の肋間開胸部を正中まで広げ(T字切開)観察したが、肋間動脈の根部の観察、剥離は困難であった。最終的に動物を犠牲にして剖検し下行大動脈の肋間動脈起始部の観察をしたが、大動脈内部よりの計測でも開口部の径でも1mm程度であり、予想以上に細く起始してから3〜4cm程度で1mm以下となり、肋間筋内に埋没するように走行していた。このためこのような細い血管を剥離することは困難であった。 今回の豚を使用した実験において肋間動脈を冠状動脈のグラフトとして使用することは非常に困難であると思われた。今後の計画としては、手術時開胸手術(成人例)の際の動脈の観察等からの再検討を考えている。
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