肋間動脈はin situグラフトとして用いることができる可能性がある。しかし昨年までの結果によるとヒト肋間動脈の口径は細径でありその血流量は低値であった。またブタ肋間動脈ではpedicleの状態でIn situグラフト化することは可能であったがにじみ出す程度の血流量であった。その内径(0.69mm±0.35mm)及び外径(0.89mm±0.37mm)は内胸動脈に対して狭小であり、等尺性張力測定では収縮弛緩の有意な値が得られず、Length-Tension relationshipにおいてもかなり低い値であった。以上から肋間動脈は容易に攣縮すると考えられ、安定した血流量を維持するIn situグラフトとして使用するには容易に壁機能の傷害がおこるといった問題を有すると考えられた。 そこで平成15年度は血管の壁機能が温存される条件を検討した。ラットの胸部大動脈を用いてグラフトの血管壁機能の温存に関する実験を行った。異なった保存液や異なった通気条件について、またAngiotensin II type 1 receptor blocker (ARB)を添加した条件について、そして凍結保存グラフトについて検討した。その結果、37℃保存において保存液としてKrebs-Henseleit Bufferを使用すれば6時間は血管壁機能を良好に温存できることを明らかにした。また通気条件で変化した保存液のpHによる血管壁の機能温存性の検討からは保存液のpHは非常に重要であることが確認された。次にARBによる血管壁機能の温存効果を検討し、Angiotensin IIによる弛緩反応の抑制が阻害されることを証明した。またSucroseとDMSOの同時使用による凍結血管の壁機能温存性を検討し-80℃にて保存した場合、解凍した血管の収縮反応は経時的に低下することを明らかにした。またARBによる凍結血管の壁機能の温存効果を明らかにした。
|