研究課題/領域番号 |
12671314
|
研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
笹栗 志朗 高知医科大学, 医学部, 教授 (60196186)
|
研究分担者 |
朝海 怜 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (20167224)
西森 秀明 高知医科大学, 医学部, 助手 (70294840)
|
キーワード | ミトコンドリア / アポトーシス / 心機能の保持 |
研究概要 |
【目的】現在、心臓移植の臨床に応用されている低温単純浸漬法はその簡便性より広く用いられている保存法であるが、低温虚血時間には未だ安全限界が存在する。細胞の膨化、細胞外浮腫、細胞内アシドーシス、再灌流傷害、カルシウム過負荷等は虚血時間と平行して進行し、ともにミトコンドリア機能を低下させる。一方、アポトーシスのシグナル伝達機構の研究にて、mitochondrial permeability transition pore(PTP)が細胞死の決定機構であることが判明してきた。死のシグナルはPTPを開口させ、シトクロムCを細胞質へ放出し、カスパーゼカスケードを活性化し死を誘導する。我々は、新たに開発されたPTPを制御するMS1化合物を用いて、心筋再灌流傷害を制御できることを報告してきたが、今回、心保存に伴う心筋傷害がPTPを制御することで抑制可能かどうかを検討した。【方法】male Wister ratsを用い、心摘出後、working modeで浸漬前の心機能を測定し、St.Thomas液にて心停止を得、以下4群の4℃保存液に浸漬し12時間後の心機能および再灌流1時間後の心筋内ATP、水分含量、細胞電顕像を評価した。(1)生食(2)生食+MS1(3)UW液(4)UW液+MS1(MS1:10μmol/L)【結果】表に示すように、心機能、心筋内ATP、水分含量はいずれもMS1投与群で有意に良好に保持されており、電顕像にてもミトコンドリアの構造はMS1投与群で良好に保たれていた。このMS1の効果はPTP開口薬lonidamineで相殺された。 【結論】摘出心の心機能の保持には、低温保存中のPTの制御が重要であることが示唆された。新たに開発された細胞死抑制化合物MS1は保存液の添加剤として有効である。
|