研究概要 |
1.非小細胞肺癌のcell line7株をヌードマウスの心腔内に投与し,そのうち,3株において,脳転移が形成されることを確認した. 2.これら3つの細胞株のうち,EBC-1は,心腔内投与により,脳転移だけでなく,骨転移も形成することが確認された.また,これらの転移巣より得られた細胞株(それぞれ,EBC-1/brain,EBC-1/boneと呼称する)は,in vitroで安定して培養可能であり,転移巣にて継代することで,転移能を増強させることが可能であった. 3.それぞれ,転移巣にて5回継代したEBC-1/brainは,ヌードマウスに骨転移を起こすことはなく,同様にEBC-1/boneは脳転移を起こし得ないことが,実験により確認された. 4.脳転移能の評価を行ったところ.ヌードマウスで,EBC-1は20%,EBC-1/brainは100%,EBC-1/boneは0%に脳転移を形成した. 5.EBC-1,EBC-1/brain,EBC-1/boneの3つの細胞株をlaminin上で培養した場合,EBC-1/brainのみが,伸展可能であり,また,lamininに対する接着能,遊走能および,laminin上での増殖能は,EBC-1/brainにおいて最も亢進していることが確認された. 6.細胞表面のlaminin receptorであるintegrin alpha 3 beta 1が,EBC-1/brainにおいて,EBC-1に比べ発現が亢進していた.EBC-1/boneでは逆に発現の低下が見られた. 7.EBC-1/brainにおいてintegrin alpha 3 beta 1を阻害した場合,ヌードマウスにおける脳転移の頻度が有意に抑制された. 8.以上の結果より,非小細胞肺癌の脳転移において,integrin alpha 3 beta 1とlamininが重要な因子であることが推測された.
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