研究概要 |
・ヒト肺癌の既存の細胞株7株を用い,ヌードマウスに投与し,脳転移を形成するかどうかの検討を行った.経静脈的投与では脳転移は形成されず,左心室内投与にて脳転移の形成を確認した. ・脳転移の形成の確認には,脳全体を摘出し,細胞培養系に戻し,癌細胞の増殖を確認する方法を取った. ・脳転移形成が確認された3株を用いて,継代により高脳転移株の樹立を試みたところ,ヒト扁平上皮癌細胞株EBC-1にて高脳転移株EBC-1/brainを樹立し得た.他の2株においては,安定した脳転移を得ることが困難であった. ・EBC-1及びEBC-1/brainを用いて細胞学的性状の検討を行つた.EBC-1/brainはlaminin上での増殖,lamininに対する遊走,接着が増強していた.integrinはalpha3 betalが増強しており,これらの反応性の増強は,このintegrin発現の増強によるものと考えられる. ・laminin上でのEBC-1/brainの増殖については,接着依存性apoptosisの関与が考えられた.laminin上で継続して培養したEBC-1/brainは,通常培養のEBC-1と同等の増殖能を有し,laminin上で培養したEBC-1においては,apoptotic cellsの出現が通常より多く確認された.integrin alpha3あるいは,integrin beta1を抑制した場合,EBC-1/brainにおいても,EBC-1/originalと同様,apoptotic cellsの出現が確認された.EBC-1/brainの高脳転移性は,lamininに対する接着能の亢進により,接着依存性にapoptosisが抑制されることに起因するものである可能性が高いと考えられる. ・本研究成果は,学術雑誌に投稿中であるが,脳転移巣の組織像の確認が必要であることを指摘されたため,最終年度において,組織像の確認のための実験を追加した.
|