研究概要 |
HRCTの普及に伴い、小型円形陰影の発見頻度が増加しているが、非手術的に確定診断を得ることは容易でない。われわれは気管支鏡下に低侵襲で特定領域の気道内組織液(ELF)を採取できるマイクロサンプリング(MS)法を開発した。ELF中のサイトカインなどを測定し、ARDSの診断・治療に利用している。末梢型小型肺腺癌症例で腫瘍近傍のELF中腫瘍マーカーを測定し、肺癌の補助診断となりうるかを検討した。 MSプローブは先端に綿チップのついたカテーテルと外筒からなり気管支鏡チャンネルから挿入し選択的にELFを採取できる。末梢肺癌症例(n=12)に対してMSプローブを使用し透視下に腫瘍または近傍のELFを採取しCEA, CYFRA, SLX, proGRPなどを測定した。 肺癌症例の腫瘍径は8〜28mm、平均20mm。 MSプローブにより得られたELF中の腫瘍マーカー濃度(腫瘍近傍/対側)はそれぞれCEA274/2、2ng/mg、CYFRA176/12.3ng/mg、SLX240/78U/mgであった。一方、非癌患者(n=15)における各値は2.5、5.1、77.8であった。 腫瘍近傍ELFでのCEA、CYFRA濃度は対側、非癌患者より高かったが、血中CYFRA、SLXは正常範囲、CEAは8.4ng/mlと比較的低値であった。出血などの合併症は認めなかった。 MS法は低侵襲であり、ELF中のCEA、CYFRA測定は小型肺癌診断の補助となる可能性が示唆された。
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