研究概要 |
本研究では、膠芽腫細胞に対する重粒子線の治療効果を高めるために、重粒子線照射後の細胞に起きるG2-blockを抑制する作用を持つと考えられるpentoxifyllineの効果を明らかにするとともに、DNA修復関連酵素であるDNA-PKの抑制物質であるwortmanninの重粒子感受性に及ぼす効果を明らかにすることを目指している。 平成12度においては、各種細胞にガンマ線と炭素線の照射を行い、経時的に蛋白を抽出してDNA-PKの発現をウェスタンブロットにて解析した。また同様に照射前後の細胞を経時的に固定し、flow-cytometer(FACS Sort)で細胞周期の解析を行った。またpentoxifyllineとwortmanninを培地に添加しその影響を同様の方法で検討した。その結果、ガンマ線照射後にはDNA-PKの発現は変化なかったが、炭素線照射では特に高いLETになるとその発現は低下する傾向を示した。これは正常のp53においても見られた現象であり、高LET粒子線照射によりDNA修復にかかわる酵素の発現が抑制されることは、細胞の高LET粒子線照射に対する放射線感受性が上昇する原因の1つであると推察される。また、照射後のG2-blockを抑制して放射線感受性を上げると予想されたpentoxifyllineは、0.25mM〜1mMの濃度では照射後のG2-blockを抑制する効果は認められず、細胞死を示すsub-G0,G1のfractionも増加しなかった。一方、DNA-PKの修復作用を抑制するwortmanninはむしろ明らかなG2-block抑制作用を示したが、そのメカニズムは現時点では不明である。次年度にはpentoxifyllineとwortmanninが、コロニー形成法による細胞の放射線感受性の変化に及ぼす影響をを検討し、各種放射線に対する増感作用を明らかにする予定である。
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