研究概要 |
動脈硬化性病変、ことに頚動脈、冠動脈等の主幹動脈の狭窄性病変は、本邦でも大きな問題となりつつある。これら病変に対して、最近血管内手術法の進歩に伴い、balloon angioplastyによる治療法が確立されつつある。しかしながら、この血管内手術により一度は狭窄が是正されても、30-50%の頻度で再狭窄をきたし、本治療法の大きな問題となっている。これら動脈硬化主病態は血管平滑筋の増殖性変化にあり、この病態の治療法を開発する事が本研究の目的である。 われわれは増殖する細胞のみを破壊する単純ヘルペスウイルス(HSV)をベクターとして用いることにより、バルーン傷害血管モデルにおいて、この増殖する血管平滑筋を攻撃することにより、その狭窄を抑止する治療結果を得たが、同時に本ベクターは再生修復する血管内皮細胞も攻撃し、血栓形成にもつながる可能性が判明した。そこで、この細胞障害生を増殖する血管平滑筋に限定する組み換えHSVベクターd12.CALPを作成した。この作成には平滑筋特異的な蛋白であるカルポニンプロモーターを利用した。このカルポニンプロモーターの下流にウイルスの複製に必須なICP4遺伝子を挿入し、このICP4遺伝子が欠失した変異株HSV, d120に先のtransgeneを組み換えることにより、d12.CALPを作成した。血管平滑筋増殖の治療に先立ち本ベクターをカルポニン陽性の平滑筋肉腫の治療に応用したところ、ヌードマウス皮下に移植した平滑筋肉腫の腫瘍塊を見事に治癒せしめた(Cancer Res.61:3969-3977,2001)今後本ベクターを用いて、動脈硬化性病変の遺伝子治療および、移植血管の慢性拒絶反応の克服に役立てたい。
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