研究概要 |
本研究では神経幹細胞移植によるてんかん治療を目的として、ラットてんかんモデルの作製、てんかんモデルラット脳への神経幹細胞移植を計画した。 まず、神経幹細胞由来のニューロンがグリア細胞上でシナプスを形成することを明らかにし、これをExperimental Neurology (165:66-76,2000)に報告した。 てんかんモデルとしてカイニン酸誘発てんかんモデルと放射線照射によるcortical dysplasiaモデルを計画したが、カイニン酸の製造中止によって実験計画の変更を余儀なくされた。そこで、神経幹細胞移植後の生着、分化、脳機能への効果を検討する実験として一過性脳虚血モデルラットを作製し、このラットの海馬に神経幹細胞を移植し検討を行った。 4 vessel (両側総頸動脈、椎骨動脈) occlusionによりラット脳虚血モデルを作成。モデル作成2週間後にBrdUおよびLacZ遺伝子でラベルした神経幹細胞を海馬に移植した。移植された細胞の1〜3%が海馬CA1領域に生着し、うち3〜9%がニューロンへと分化していた。移植3週間後から開始した水迷路テストでは、8日目から移植群が非移植群にくらべて有為な空間認識能の改善を示した。これらのニューロンはシナプス関連蛋白を発現し、空間認識能の改善時期はこの神経幹細胞を海馬グリア細胞上で分化誘導を行った際のシナプス形成時期に一致していた。これらの結果は移植された神経幹細胞が新たな神経回路形成に寄与しうることを示唆する。この結果はNeuroscicnce Letters (316:9-12,2001)に報告した。また、これらの結果はてんかんで神経の脱落した海馬においての神経回路再構築の可能性を示唆し、てんかん治療にも応用できると考えられる。 cortical dysplasiaモデルに関しては、ほぼ安定してモデル作製ができるようになってきており、発作のビデオモニタリング、脳波の同時記録を行っている。すでに発作時脳波も記録されており、これらモデルの脳への神経幹細胞移植を行う予定である。
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