脳血管障害学で未解決かつ重要な問題である脳血管攣縮の発生メカニズムを解明するために、平成12年度は、以下にのべるよう、主として細胞内Ca2+-張力同時測定法およびスキンド法を含む細胞分子生物学的手法で研究を実施した。 ウシ脳血管(中大脳動脈)を材料に、光学的細胞内Ca2+-張力同時測定法を用いて、スフィンゴ脂質(SPC)で生じる持続性収縮におけるProtein kinase C系、Rho-kinase系のブロッカーの作用を検討した。次に、スキンド血管平滑筋標本を作成し、細胞内情報伝達に影響する物質や遺伝子産物を細胞内潅流することで細胞内情報伝達機構を直接検討した。 これらの研究の結果、SPCは濃度依存性に細胞質Ca2+濃度を変化させることなく脳血管平滑筋に持続性の異常収縮を引き起こすこと、このCa2+非依存性収縮がRho-KinaseのblockerであるY27632により抑制されること、脳血管のスキンド平滑筋標本で、SPCがGTP非存在下にCa2+非依存性異常収縮を引き起こし、この異常収縮もY27632で阻害されることなどが、解明された。 これらの研究成果は、国内(スパズムシンポジウム)、国外(The 7th International Conference on Cerebral Vasospasm)で発表し、高い評価を受けた。
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