長期にわたる脳血管攣縮を生じる犬2回クモ膜下出血モデルでは脳血管攣縮が始まる4日自にTUNEL陽性の平滑筋細胞が認められると同時に、血管径は約60%に減少する。7日目にはTUNEL陽性細胞数は増加し、10日目頃より平滑筋細胞死が生じる。このモデルにおいてカルシウムがミトコンドリアに異常集積すること、4日目にcytochrome cがミトコンドリアから細胞質に漏出すること、およびcytochrome cの漏出に呼応してCaspase-3の有意な活性上昇を認めた。Caspase-3の活性上昇は14日目まで持続した。また、蛋白分解酵素であるカルパイン活性も4日目以降持続して活性型が認められた。そこで、ラットクモ膜下出血モデルを用いてミトコンドリアからcytochrome cの漏出を制御する蛋白質であるBcl2 familyの変動を調べた。Bcl2、Bax、Badは脳動脈での発現が元来少なく検出は不可能であったが、Bcl-xlとBcl-xsはlmmmunoblot法で強いバンドが検出された。そして、Bcl-xlとBcl-xs蛋白量ともクモ膜下出血後4日目に有意に減少したが、ミトコンドリアからcytochrome cの漏出を抑制する蛋白であるBcl-xlの減少の方が著しかった。今回の研究で、クモ膜下出血後にはBcl-xlの相対的な減少が生じ、ミトコンドリアからcytochrome cが細胞質に漏出し、細胞質のCaspase-3が活性化される。活性化されたCaspase-3はカルパインを活性化し、平滑筋細胞質内の収縮関連蛋白を分解する。これにより、平滑筋変性と平滑筋収縮という病態が同時に引き起こされると考えられる。
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