研究概要 |
くも膜下出血患者において,髄液中分泌型プロスタグランジンD合成酵素(PGDS)はその輸送蛋白質としての働きによって脳血管攣縮の原因物質あるいは影響を与える物質を捕捉し,脳血管攣縮を改善させる働きを持つという仮説を証明するために以下の実験を行った. (1)くも膜下出血患者の持続髄液ドレナージ廃液からPGDSを抗体カラムで精製し,捕捉している物質の同定を行った.現時点ではビリルビンおよびビリベルジンが非常に強固に結合していることが明かとなりつつあるが,その結合様式がまだ不明でさらに検討中である. (2)イヌのくも膜下腔にヒトrecombinant PGDSを投与し,血中,尿中ヘの排泄動態を検討したところ,髄液腔内に投与されたPGDSは非常にすみやかに血中に移行し,さらに尿中へ排泄されることが明かとなった. (3)イヌ自家血大槽内2回注入モデルで,脳血管攣縮の程度をPGDS持続注入群と人工髄液注入群とで比較し検討中である.現在のところPGDS注入群の方がコントロール群に比ベ脳血管攣縮の程度が軽くなるとするまでのデータは得られていない. 13年度はさらにこれらの実験をすすめて,結論を得る.またラットくも膜下出血モデルを作成し,PGDSの遺伝子および蛋白レベルでの発現変化を部位別に検討する予定である.
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