研究概要 |
平成12年4月から平成13年2月までの間に18例に検査を行った。内訳は内頸動脈閉塞10例、中大脳動脈閉塞8例であった。positron emission tomography(PET)を用い脳血流量(CBF)、脳酸素摂取率(OEF)、脳酸素代謝量(CMRO2)およびベンゾジアゼピン受容体の分布を3次元的定量的に描出した。高次脳機能はWAIS-Rを用い点数化した。結果を以下に示す。1)ベンゾジアゼピン受容体の分布が低下している領域では、常にCBFおよびCMRO2の低下を示した。しかし、ベンゾジアゼピン受容体の分布が正常にも関わらず、CBFの低下あるいはCMRO2の低下を示している領域が存在した。ベンゾジアゼピン受容体とOEFとの関係では、ベンゾジアゼピン受容体の分布が低下している領域では、OEFの亢進は見られなかったが、ベンゾジアゼピン受容体の分布が正常な領域ではOEFが亢進している領域が存在していた。2)CBF、OEF、CMRO2およびベンゾジアゼピン受容体の分布の内、高次脳機能との相関があったのはOEF(r=-0.490,p=0.049)、CMRO2(r=0.591,p=0.031)、およびベンゾジアゼピン受容体の分布(r=0.721,p=0.008)であったが、最も強かったのはベンゾジアゼピン受容体の分布であった。すなわち、CMRO2が低下していてもベンゾジアゼピン受容体の分布が正常であれば高次脳機能の低下は軽度であった。また、ベンゾジアゼピン受容体の分布が低下している領域をもつ症例では重度の高次脳機能障害を認めた。以上のことから、脳主幹動脈閉塞性病変による慢性脳虚血においては、ベンゾジアゼピン受容体の機能異常により高次脳機能障害をきたすことが示唆された。また、ベンゾジアゼピン受容体の分布状態を知ることにより、高次脳機能障害の程度を知り得ることとも示唆された。
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