研究概要 |
平成12年4月から平成14年11月までの間に40例に検査を行った。内訳は内頸動脈閉塞25例、中大脳動脈閉塞15例であった。positron emission tomography (PET)を用い脳血流量(CBF)、脳酸素摂取率(OEF)、脳酸素代謝量(CMRO2)およびベンゾジアゼピン受容体の分布を3次元的定量的に描出した。高次脳機能はWAIS-Rを用い点数化した。結果を以下に示す。1)CBF、OEF、CMRO2およびベンゾジアゼピン受容体の分布の内、高次脳機能との相関があったのはOEF(r=-0.640, p=0.002)、CMRO2(r=0.655, p=0.001)、およびベンゾジアゼピン受容体の分布(r=0.831, p=0.0001)で、最も強かったのはベンゾジアゼピン受容体の分布であった。すなわち、CMRO2が低下していてもベンゾジアゼピン受容体の分布が正常であれば高次脳機能の低下は軽度であった。また、ベンゾジアゼピン受容体の分布が低下している領域をもつ症例では重度の高次脳機能障害を認めた。2)さらに血行再建術後の高次脳機能の改善率と術前のベンゾジアゼピン受容体分布は強い正の相関を示した(r=0.889, p=0.0001)。3)ベンゾジアゼピン受容体分布は血行再建術前後では有意の変化は示さなかった。 以上のことから、脳主幹動脈閉塞性病変による血行力学的脳虚血においては、ベンゾジアゼピン受容体の機能異常により高次脳機能障害をきたすとともに、ベンゾジアゼピン受容体の分布状態を知ることにより血行改善による高次脳機能障害の改善の有無を知り得ることとが示唆された。また、ペンゾジアゼピン受容体の障害は非可逆的であることが示唆された。
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