研究概要 |
言語認知過程には、言語刺激としての受容、単語としての意味付け、更にその単語が文章を構成するときの意味的なつながりであるシンタクスの理解といった複数プロセスが逐次的・同時並列的に関与すると考えられている.オドボール課題を用いて課題に非言語刺激を用いた場合と言語刺激を用いた場合の長潜時成分の差異についての検討の前段階として、現在我々は言語刺激の視覚呈示を用い、言語の認知プロセスを時間・空間分解能に優れるMEG測定によって考察し、言語神経活動の経時的プロセスへのアプローチを試みている.具体的方法は以下の如くである: 1)漢字から成る2文字単語を実験セッションの前に、実験セッションと同じ条件で視覚呈示し、記憶させる 2)実験セッションでは既出の単語に新たな単語を含めて同様に呈示し、既出のものをターゲットとして示指伸展で反応させる 3)呈示時点をトリガーとした加算平均法によって、既出の単語の認知に関わる神経機構の解析を行なう 4)Breier, Papanicolaouらによれば、左右半球で既出のターゲット単語に対する反応のダイポール数を比較したところ、優位半球で多いという結果であった【Breier JI.et al,J Clin Exp Neuropsychol,1998 12,20:6,782-90】 上記課題における誘発脳磁反応の結果については現在解析中であるが、被験者が"既出の単語"と認識して示指伸展反応が認められた刺激と示指伸展反応の無かった刺激とで、それぞれ刺激のonsetで加算平均法により得られた誘発脳磁界のroot mean squareの比較を行なっている.これによって"既出の単語"と認識される際には、ワーキングメモリー上に貯蔵された言語の認知に関わる神経機構が賦活することが予想される.
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