研究課題/領域番号 |
12671399
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 聰一郎 東京医科歯科大学, 疾患遺伝子実験センター, 助教授 (10242190)
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研究分担者 |
市野瀬 志津子 東京医科歯科大学, 機器分析センター, 助手 (60014156)
高久田 和夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教授 (70108223)
四宮 謙一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20111594)
田口 隆久 産業技術総合研究所, 大阪工業技術研究所・有機機能材料部, 部長
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キーワード | キトサン・チューブ / ラミニン / ラミニンペプチド / 末梢神経再生 / 異型断面 / 架橋処理 |
研究概要 |
カニの腱を利用した神経再生材料 神経架橋用チューブの素材として、天然素材から合成したキトサンが利用できることが明らかになってきた。キトサンは抗菌剤や健康食品として広く用いられているが、セルロースに似た骨格をもつ多糖類で、分解産物(グルコサミン)は人体に無害である。キトサンは、節足動物(エビ、カニ、昆虫など)の外殻や腱の主成分であるキチンから合成される。カニの腱を化学処理することにより、チューブ状にする技術を開発した。初めに、カニの腱を薄いアルカリ水溶液とエタノールで処理して腱に含まれる脂質やタンパク質を除去する。次いで、高濃度のアルカリ水溶液で脱アセチル化反応を進めて、キチンからキトサンに変換する。得られたキトサンはほとんど不純物を含まず、形状も平板からチューブに変化する、このチューブの断面は、神経断端から遊走してくる再生神経線維が最も入りやすい形状に採型することが出来る。キトサンチューブの強度向上のため熱処理して分子間結合を強くし、さらに無機物(リン酸カルシウム)をチューブの外側表面に修飾する処理を行う。同時に、再生神経がチューブ内壁に接着し、伸張しやすいように細胞接着因子であるラミニンペプチドを結合(酸アミド結合)させることも可能である。 神経組織の再生 ラットの坐骨神経にキトサンチューブ(内径2mm、長さ15mm)を架橋移植した。チューブの断面は円形と三角形の2種類用意し、未処理、熱架橋、熱架橋+ハイドロキシアパタイト(HAp)コーティング処理したチューブを使用した。手術用顕微鏡下に縫合後、組織学的観察を行った。誘発筋電図も記録し、再生神経と筋肉の機能的結合も評価した。未架橋チューブは管腔狭小化が著しく、神経再生は遅延した。熱架橋処理、HApコーティングを加えると力学的強度が向上し管腔構造が保持された。その結果、4〜6週で未熟な神経組織の再生が見られたが、後者の方が神経再生は促進された。また、チューブの断面を三角形(異型断面)にすることで再生神経との接触面積が拡大し、神経組織がチューブ全体に広く分布した。 次に、三角筒の熱架橋処理したチューブに、ラミニン、及びラミニンの機能発現部位を合成したラミニンペプチド(YIGSR)を結合させて、同様の実験を行った。これらのチューブでは移植後2週という早期から神経組織が再生し、8週後には再生神経組織の集合体が形成された、さらに、移植後8週以降は筋電図でM波も記録されて、運動神経の機能回復が確認された、これは自家神経移植例に匹敵する神経再生促進効果であり、合成ラミニンペプチドをコーティングしたキトサンチューブが自家神経と同等の移植成績を期待できる「人工神経」であることが示唆された。
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