研究概要 |
本研究の目的は、ヒト細胞外基質に存在するコラーゲンとエラスチンの各種架橋アミノ酸であるピリジノリン類(ピリジノリン、デオキシピリジノリン)、デスモシン類(デスモシン、イソデスモシン)およびadvanced glycation endproducts(AGE:糖化タンパク最終生成物)ペントシジンの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による同時測定法を確立することである。コラーゲンとエラスチンは組織および臓器の強度と弾力性を保つために欠かせない細胞外基質であるが、コラーゲンとエラスチン線維の安定性を維持するために、成熟架橋物質が重要な役割を果たしている。コラーゲンとエラスチンの成熟架橋物質には、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、デスモシン、イソデスモシン、およびAGE架橋物質ペントシジンがあり、これらは組織の成熟、変性、加齢などの変化に関与している。従来、ピリジノリン類、デスモシン類、そしてAGE架橋物質は自己蛍光をもっているものと、もっていないものがあるため、それらに対する測定は個別に行われており、全てを同時に測定する方法はなかった。自己蛍光を持つピリジノリン類・AGE架橋物質と、蛍光を持たないデスモシン類を蛍光検出器と吸光検出器を直列に配置し、流出条件を検討した結果、ピリジノリン類、デスモシン類およびAGE架橋物質ペントシジンをone-injectionで同時測定可能なHPLC法を確立し得た(Chen JR, Takahashi M, et al. Anal Biochem 278:99-105,2000)。本法は精度、再現性とも優れた方法であり、この方法を論文とした。さらに、本法を用いることにより、コラーゲンとエラスチンがともに存在する結合組織(腱、靭帯、皮膚、動脈等)に対して、それらの成熟架橋物質を同時に、迅速に測定することにより、各種結合組織のコラーゲンとエラスチン濃度の定量が可能であった(高橋正哲、ほか、日本整形外科学会雑誌75(8):S1071,2001)。これにより、コラーゲンとエラスチンに富む結合組織の病態の解明に有用である。
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