研究概要 |
RT-PCRではGDNF mRNAは損傷後30分で上昇を始め3時間でcontrolの約10倍、その後徐々に減少し損傷後4週でcontrolと同程度に戻った。免疫染色ではGDNFは損傷部だけでなく脊髄横断面全体に散在していた。ControlではGDNF陽性細胞は脊髄前角にあるneuronと思われるNSE陽性細胞に弱く存在しED-2,OX-42,GFAPと重なりは認めなかった。損傷後1日では、損傷中心部ではNSE陽性細胞はみられず、GDNF陽性細胞はED-2,OX-42と重なりがみられた。GFAPとは重ならなかった。GDNFはcontrolではneuronに、損傷後はmacrophage,microgliaに存在していると考えられた。 今回定量的RT-PCRによりGDNF mRNAは損傷後数時間という早い段階でup-regulateされていることがわかった。免疫染色ではGDNF蛋白の存在部位が受傷を契機にneuronからmicroglia,macrophageといった炎症性細胞にshiftしていることが示された。In vitroでは炎症性サイトカインであるIL-1β,IL-6,TNF-αやFGF等がグリア或いは神経由来の培養細胞においてGDNF産生を促すと報告されているが、in vivoでもそれらのサイトカインが損傷後早期に遺伝子レベルでGDNF発現を調節する働きがあるかは定かでない。今後受傷後数時間以内に転写レベルでGDNF発現を促進する因子が何であるか特定する必要がある。生物学的意義としては、損傷後早期のGDNFのmacrophage, microgliaからのparacrine secretionがneuronに対し保護的に働く機能を有しているかもしれない。 今後はGDNF産生性のadenovirus vectorを導入し遺伝子治療の可能性と有効性を組織学的、運動機能学的に検討する。
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