研究概要 |
先ず、最初に関節軟骨欠損の修復におけるIGF-Iの役割を明らかにするため、家兎の膝関節を用いて研究を行った。家兎の大腿骨顆間部に作成した直径3mm径の骨軟骨欠損に対してIGF-Iを含浸したcollagen sponge(IGF-I:100μg、10μg)を充填した。対照としては反対側大腿骨顆間部に同じく3mm径の骨軟骨欠損を作製し、同量のcollagen spongeのみを充填した。術後3,6週にて経時的に屠殺し、肉眼的、組織学的検討を行った。肉眼的観察では、IGF-I投与群と対照群の間では明白な差は認められず、3週において、欠損部の一部に赤色調の陥凹部が認められるが、6週になると殆ど全体が均一な白色調を呈し周囲正常関節面とほぼ同じ高さまで、修復組織で被覆されていた。組織学的観察では、3週、6週においてIGF-Iの量による差異は認められなかった。Wakitaniらのhistological grading scaleによる修復組織の評価では、6週においてIGF投与群3.9,対照群5.7であったが、有意差はなかった。軟骨欠損の大きさが3mmの欠損では差がでないので、今後より大きな5mmの欠損で比較と、IGF-Iの至適用量とcarrierのさらなる検討必要と考えられた。 次に、ヒアルロン酸のスポンジをcarrierとし、成長因子としてb-FGFを用いて同様の実験を行った。軟骨欠損の大きさは、4mmとしb-FGFはそれぞれ100μg、1μg、10μgをゼラチンに含浸させヒアルロン酸のスポンジ内にしみこませた。4,8週で屠殺し、組織学的に検討を行った。4週の時点では、ヒアルロン酸のスポンジ単独使用による効果は認められず、b-FGFの100μg、1μg投与において軟骨修復が増長される傾向を認めているが、引き続き実験を継続中である。
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