研究概要 |
我々はラット大腿骨の骨延長実験モデルを確立し、牽引メカニカルストレスが骨形成細胞の遺伝子発現に及ぼす影響を観察してきた。延長仮骨の組織像を観察すると、延長初期には旺盛な内軟骨性骨化がみられるが延長が進行するとともに軟骨性仮骨は消失し膜性骨化に置き換わることが分かった。また内軟骨性骨化と膜性骨化の橋渡し機構として第3の骨形成の様式「類軟骨性骨化」が存在することが明らかとなった。 Northern blot analysisやin situ hybridization法により延長仮骨の細胞の遺伝子発現を解析した結果、延長仮骨ではBMP-2およびBMP-4遺伝子が過剰に発現されていることがわかった。またBMP-2やBMP-4の下流にあるRunx2/Cbfa1/Pebp2aも過剰発現されていた。Runx2は骨芽細胞のmaster geneとして知られる転写因子であり、そのノックアウトマウスは骨芽細胞の分化が障害され骨格の形成が著しく障害されるため致死性となる。またRunx2遺伝子のヘテロ変異により鎖骨頭蓋異形成症が発生する(Gene 2000)。BMPのシグナル伝達物質であるSMADとRunx2が結合することにより骨芽細胞での転写活性が促進されると考えている(PNAS 2000)。ラット大腿骨の延長実験ではRunx2遺伝子は骨切り後4日目の類軟骨組織に強い発現が観察された。延長開始後も幼若な軟骨細胞にはRunx2の発現が見られたが、肥大軟骨細胞には発現は見られなかった。延長が進むにつれ直接骨化が増えるがこのときの骨芽細胞にも強い発現が見られた。つまりRunx2遺伝子の発現部位と発現時期はBMP-2,-4のそれと良く一致していた。延長仮骨の細胞は牽引メカニカルストレスに反応してまずBMP-2,-4を過剰発現し、その結果Runx2の遺伝子発現が増幅いるのではないかと考えられた。
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