免疫反応を介した非外傷性骨壊死における病態解明および新たな治療法の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671414
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70273620)
• 研究分担者: 越智 隆弘 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (80112035) ; 西井 孝 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70304061)
• キーワード: 特発性大腿骨頭壊死症 / 多発性骨壊死症 / 核磁気共鳴画像 / 骨シンチグラム / 虚血性発現蛋白

研究概要

特発性大腿骨頭壊死症に大腿骨頭以外の部位に骨壊死が合併しているいわゆる多発性骨壊死症について、核磁気共鳴画像(MRI)や骨シンチグラムを使って調査した。多発性骨壊死症は、ステロイド性やアルコール性大腿骨頭壊死症には合併するが、狭義の特発性大腿骨頭壊死症には発生していなかった。MRIでは、従来多発性骨壊死症は長管骨の骨端に多いとされた骨壊死が、骨幹部のみならず膝蓋骨にも認められることが明らかとなった。ステロイド性やアルコール性大腿骨頭壊死症は、その役25%が多発性骨壊死症を合併しており、大腿骨顆部や脛骨近位端に多く、骨壊死発生機序に血管や血液凝固、薬物傷害などの全身的な素因が関与していることが示唆された。副腎皮質ステロイド剤は、近年骨のアポトーシスを誘導し、骨阻鬆症における骨減少に寄与していることや、ステロイド性骨壊死での関与を示唆する報告がなされている。しかしながら、過去の膨大に蓄積されたデータや病理学的所見から大腿骨頭壊死症は虚血により起こる壊死であることが強く示唆されている。ウサギ血清病モデルを使って、骨壊死発生時期を造影MRIで観察し、組織学的に壊死が観察される前に骨の部分的しかし広範な虚血が起きていることが明らかとなった。骨が虚血後どのような細胞の反応で、壊死にいたるかを明らかにするため、ラットを使って虚血状態の大腿骨を作成し、経時的にIn Situ Hybridization法で虚血時発現する蛋白のORP15とHO1の骨組織での発現とTUNNEL法でのアポトーシスを観察した。この実験で、骨細胞および骨芽細胞は虚血後12時間からORP15とHO1のメッセージを発現し72時間以降でTUNNEL法陽性となり、骨組織が虚血により壊死にいたる過程でアポトーシスの形態をとることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Nakai T,Masuhara K,Nakase T,Sugano N,Ohzono K,Ochi T: "Pathology of femoral head collapse following transtrochanteric rotational osteotomy for osteonecrosis."Arch Orthop Trauma Surg. 120. 489-492 (2000)
• [文献書誌] Sakai T,Sugano N,Tsuji T,Nishii T,Yoshikawa H,Ohzono K: "Serial magnetic resonance imaging in a non-traumatic rabbit osteonecrosis model : an experimental longitudinal study."Magnetic Resonance Imaging. 18. 897-905 (2000)
• [文献書誌] Nakai T,Masuhara K,Nakase T,Sugano N,Ohzono K,Ochi T: "Scintigraphic assessment of the rotated femoral head after transtrochanteric rotational osteotomy for osteonecrosis."Journal of Bone and Joint Surgery. 82-A. 1421-1425 (2000)
• [文献書誌] Sakai T,Sugano N,Nishii T,Haraguchi K,Yoshikawa H,Ohzono K :: "Osteonecrosis of the patella in patients with nontraumatic osteonecrosis of the femoral head."Acta Orthop Scand. 71. 447-451 (2000)
• [文献書誌] Sakai T,Sugano N,Nishii T,Haraguchi K,Yoshikawa H,Ohzono K :: "Bone scintigraphy for osteonecrosis of the knee in patients with non-traumatic osteonecrosis of the femoral head : comparison with magnetic resonance imaging."Ann Rheum. 60. 14-20 (2001)
• [文献書誌] Sato M,Sugano N,Tsukamoto Y,Ogawa S,kitamura Y,Nomura S,Ohzono K: ": Apoptosis and expression of stress protein(ORP15, HO1)during development of ischemic osteonecrosis in a rat experimental model."Jounal of Bone and Joint Surgery. 83-B(in press). (2001)