(目的)Phosphodiesterase阻害による神経障害軽減の可能性を探るために、ラット脊髄より初代培養した神経細胞を一酸化窒素供与体(sodium nitroprisside : SNP)に暴露し、神経障害の程度を傷害された神経細胞より放出されるLDHを測定することにより評価した。 (方法)胎生14日のラット胎児より脊髄を取り出し、トリプシン処理によって神経細胞を単離培養した。この細胞をSNPに24時間暴露することによって、神経障害を作成し、その程度を培地中に放出されたLDH量で評価した。 (結果)神経細胞をSNPに暴露すると暴露後数時間よりLDH放出を認めた。LDH放出量は投与するSNP量に濃度依存性であり、EC50は約10μMであった。他のNO供与体(NOC18など)でも同様の神経障害が観察された。このSNPによる神経障害の一部はsuperoxideを除去するSODによっても抑制され、SNPの神経毒性の一部にはsuperoxideも関与していると思われた。SNP暴露により細胞内のguanylate cyclaseが活性化され、細胞内cyclic GMPが上昇する。Propentofyllineはcyclic AMPのPhosphodiesterase阻害薬として知られているが、SNPと同時に投与すると細胞内cyclic GMPを更に増大させることができる。一方、細胞膜透過性のあるcyclic GMPである8-Br-cGMPを投与するとSNPによる神経細胞障害を軽減できる。PropentofyllineをSNPと同時に投与すると、SNPによる神経障害を著明に抑制できた。このことより、nitric oxideが関与する細胞障害ではcyclic GMPが上昇しており、Phosphodiesteraseを阻害する事によってこのcyclic GMPを更に上昇させることによって神経障害を軽減することができると考えらる。 (結論)障害メカニズムにnitric oxideを含む神経障害はPhosphodiesteraseを阻害することによって抑制されると考えられる。
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