平成12年度の研究において、椎間板髄核を神経根上に設置した椎間板ヘルニア・モデルを用いてpentoxifylline(抗TNF薬剤)を髄核と同時に局所投与することで、脊髄後根神経節(DRG)の内圧(endoneurial fluid pressure)の上昇が有意に抑制されること、が判明した。 平成13年度は、1)Tumor Necrosis Factor(TNF)を神経根上に設置することにより、脊髄後角ニューロンにおいて自発放電が惹起されるか否かを明らかにすること、2)神経根性疼痛の治療として行われる神経根ブロックに用いられる局所麻酔薬であるlidocaineが椎間板ヘルニア・モデルで惹起されるDRG内圧の上昇やDRGの浮腫に対する影響を検討すること、を目的として研究を行った。 その結果、1)TNFによって脊髄後角ニューロンにおいて自発放電が惹起されることが判明した。この事実は、TNFが神経根性疼痛発現に重要な役割を果たしていることを示している。また、椎間板ヘルニア・モデルを用いてlidocaineを髄核と同時に局所投与することで、DRGの内圧の上昇が有意に抑制されることが判明した。また、DRGの組織学的な検討では、lidocaineが髄核によって惹起されるDRG内の浮腫を抑制することが判明した。これらの結果は、神経根ブロックの治療効果発現機序についての新しい知見を示したものである。 平成13年度の研究により、TNFが神経根性疼痛に重要な役割を果たしていること、神経根性疼痛の治療として神経根ブロックは有用な治療であること、が示唆される結果を得ることができた。
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