研究概要 |
AAVベクターは,遺伝子導入効率が高く,病原性や癌原生を認めず生体にとって安全性が高いなどの利点を有する.また大きさは直径が20nmと小さく,アデノウイルスベクターでは難であった軟骨組織への遺伝子導入を期待される.サイトメガロウィルスプロモーターからGreen Fluorescent Protein(GFP)を発現するAAVベクターを用いてヒト軟骨初代培養細胞遺伝子導入後1日目において、16%の軟骨細胞にGFPのシグナルを検出できた。遺伝子導後7日目には導入効率は95%に増加した。この結果は、AAVベクターを用いた初代軟骨培細胞への遺伝子導入が可能であること、および導入した遺伝子が軟骨細胞において効率よく発現することを示している。関節軟骨細胞はAAVベクターの遺伝子導入のターゲットとして有効であることが判明した。ヒト関節軟骨器官培養を用いたAAVベクターの遺伝子導入実験では、免疫組織化学において軟骨組織浅層から深層にかけて染色陽性の軟骨細胞を検出できた。またAAVベクターを用いて遺伝子導入したGFP蛋白の発現は、遺伝子導入28日後まで検出できた。この結果は、AAVベクターが軟骨組織の表面から深層にむかって浸透していき、軟骨組織に囲まれた軟骨細胞に遺伝子導入できることを示している。AAVベクターを用いれば、アデノウイルスベクターおよびHVJ-liposomeで遺伝子導入が不十分であった深層の基質中の軟骨細胞にも、遺伝子導入できることが明らかになった。軟骨細胞も通常分裂しない、ため、軟骨細胞に導入された遺伝子の長期的な発現が期待できる。軟骨変性疾患に対して、治療効果のある遺伝子を挿入したAAVベクターを直接関節内に投与するin vivo法を用いれば、軟骨細胞に遺伝子導入され、軟骨組織の修復促進なおよび変性予防ができると考える。
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