研究概要 |
骨端軟骨における成長ホルモンおよび甲状腺ホルモンの作用を、ラット大腿骨の器官培養系を用いて検討した。 生後2日のラットより大腿骨を採取し、周囲軟部組織を除去した後、器官培養を行った。この培養系に成長ホルモン(GH,1μg/ml)あるいは甲状腺ホルモン(Thyroxine(T4),100ng/ml)を投与した。培養3週間後に、大腿骨骨端軟骨を採取し、グアニジンを用いてtotal RNAを抽出し、得られたtotal RNAより、II型コラーゲン、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インシュリン様成長因子(IGF-I)、あるいはトランスフォーミング増殖因子(TGF-β)に対するprimer DNA(cDNA)プローブを用いてそれぞれの遺伝子の発現をRT-PCR(Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)法により観察した。 その結果、II型コラーゲン発現は対照群に比べ、GH投与群では増強、T4投与群では減少、GH+T4投与群では減少していた。TGF-β発現は、対照群ではRT-PCR産物の電気泳動にて2bandを認めたが、GH投与群では2bandを認め、T4投与群およびGH+T4投与群では1bandを認めるのみであった。bFGF発現は対照群においてサイズの小さいbandを認めたが、GH投与群およびT4投与群では同じサイズの小さいbandを認めたのに対し、GH+T4投与群ではサイズの大きいbandを認めた。IGF-Iに関しては、対照群では大中小3サイズのbandを認めたが、GH投与群およびGH+T4投与群ではサイズ大のbandを強く認め、T4投与群ではサイズ中のbandを強く認めた。 このことから、成長ホルモンあるいは甲状腺ホルモンにより、骨端軟骨における各成長因子の発現は異なっており、また、骨端軟骨のII型コラーゲンの発現とTGF-β、IGF-Iは同様に変化し、成長ホルモンはII型コラーゲンの発現に+の方向に働き、甲状腺ホルモンは-の方向に働いていると考えられた。
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